箱玉系(Box-Ball-System,BBS)入門-Vol.01

 
セル・オートマトン(Cellular Automaton (CA))
はじめに,セル・オートマトンについて説明します.ここでは,1次元のものを考えることにします.
 
まず,セルと呼ばれるマスが1列に並んでおり,各マスには''状態”が割り当てられています.例えば,状態はすべてのマスについて0または1とします.
 
現在のセルの状態から,次の時刻のセルの状態を定める規則を与えます.これにより,セルの状態(0, 1)を順次求めていくことができます.
 
 
Elementary Cellular Automaton (ECA)
n番目のセルの時刻t+1での値が,時刻tにおけるn-1, n, n+1番目のセルの状態によって決まるような規則を考えます.つまり,次の時刻に0になるか1になるかは,自身と隣接した3マスの0, 1によって決まる,というわけです.
隣接した3マスの時刻tでの状態の組み合わせは,
(1,1,1), (1,1,0), (1,0,1), (1,0,0), (0,1,1), (0,1,0), (0,0,1), (0,0,0)
の8通りあります.この8つの組み合わせに対して次の時刻の状態0,1を定めると,ルールは全部で2⁸=256通りあります.
 
例えば,ルール22と呼ばれるECAのルールは次のようになっています.
これがルール22と呼ばれている理由は,真ん中のセルの次の状態を表す「00011010」が2進数で22を表しているからです.同様に,256通りある規則はルール0からルール255までの番号付けがされています.
 
現在の状態
111
110
101
100
011
010
001
000
真ん中のセルの次の状態
0
0
0
1
1
0
1
0
 

 
 
Box-Ball System(BBS;箱玉系)
箱玉系と呼ばれるオートマトンは,フィルター型セル・オートマトンの一種です.上記のECAではあるセルの次の状態が知りたければ,現在の隣接したセルの状態を見ればわかります.一方で,箱玉系ではあるセルの次の状態を知るために,次の時刻のいくつかのセルの状態も必要になってきます.このようなセル・オートマトンをフィルター型といいます.
 
箱玉系という名前は,箱に入れた玉を移動させていく操作によって説明されることから付いた呼び方です.
 
箱玉系のルールは様々な表現の仕方がありますが,ここでは最も典型的な玉の移動による表示を紹介します.
①最も左にある玉を,自分より右側にある最も近い空き箱に移動する.
②次に左にある玉を,自分より右側にある最も近い空き箱に移動する.
③同様に繰り返し,すべての玉を1回ずつ移動するまで行う(1回動かした玉は動かさない).
 

 
この時間発展を繰り返すと,

箱玉系では,玉が並んでいるとその長さに応じた速さで右に移動していきます.右に短い玉の列があると追いついてしまい,少し複雑なパターンが現れます.しかし,更に時間が経つと元の玉の列の長さを保ったまま追い抜いたようにも見えます(上の例では,もともと左から長さ3, 2, 1の列があり,最後には左から1,2,3の長さになっています).この性質をソリトンと呼びます.
 
実は,数学的には,KdV(Koretweg-deVries方程式)戸田方程式といった微分方程式から,この箱玉系を表す方程式が得られることが知られています.
 
結論
ECAはセル・オートマトンの中でも基本的なもの(名前にelementaryって入っている)である.
また,箱玉系はソリトン性と呼ばれる性質を持っており,KdV方程式や戸田方程式との関係が知られている.